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卒園児たちの声(1/2)

【2017年度卒園児保護者(発達心理学・進化心理学専門家)】

駒場キャンパスで働いているときに、第1子が生まれました。仕事中に直接母乳をあげに行きたいという思いがあり、職保近接というのが主な理由で、この園を選びました。出身研究室の先輩方がお子さんを預けていたことも、安心感につながりました。また、以前からキャンパス内を走るぞうり姿の子どもたちを見ていて、たくましく育ってくれそうだ、という期待もありました。

そのようなわけで、実は保育の内容を吟味し、他園と比べて選んだというわけではありませんでした。しかし、実際に子どもを園に入れてみて、子どもの気持ちを大切にし、駒場の豊かな自然に触れ、思いっきり体を動かして遊ぶ、素材の味を大切にする、といった保育方針のすばらしさだけでなく、以下のような園のよさを感じました。

 

・適度な集団規模による共同保育の実現

ヒトは、多くの哺乳類種がしているような、母親単独での子育てができない種です。母親だけでなく、父親や血縁者に加え、いろいろな他者がかかわり、皆で子育てをする、つまり共同保育をする種です。この園は、保育士さんだけでなく親も、積極的に園の運営にかかわって子どもの育ちを支えており、まさに共同保育を実現しているといえます。

その実現に貢献しているのが、園のサイズ(人数)ではないかと思っています。1クラス8-9人で0歳児クラスから5歳児クラスまで、園児は50人前後です。スタッフ、親を含めても200人には届きません。この数は、ダンバー数といってヒトの生物学的な集団のサイズとして知られる150人に近いものです。ダンバー数は、組織などがうまくまとまって機能する数ともいわれます。大人も子どもも、皆がお互いの顔や関係性を覚えることができるこの集団サイズが、子どもたちが育つ環境を作るという共通の目標を達成するのに適したものになっているのではないか、と考えています。

園のサイズゆえ、親たちも園の子どもたちの顔と名前をよく把握することができます。個別性をもってある程度の数の子どもたちを見ることは、子どもの成長・発達を理解するのにとても良い機会となります。自分自身は小さい子の面倒を見たことがないまま育ち、初めての子育てで不安でいっぱいになりがちな親にとって、そのような機会はとても貴重です。自分の子で心配なこと・気になることは、実は他の子にも見られることだと気づいたり、月齢の高い子を見ることで、先の成長・発達を予測することができたり、個々の子の育ちは多様であることを知ることができます。

子たちだけでなく、他の親御さんたちの顔や名前を把握することも容易です。日々の送り迎え時だけでなく、父母会や園が開催してくれる交流会で親しくなることができます。子育ての相談の機会があることや情報交換ができることも、子育てにおけるソーシャルサポートの一つとして大切なものですが、他の親御さんとつながりがあることによって、いろいろなご家庭の様子・工夫を聞くことができ、子育てがより楽になったと感じます。

子どもたちにとっても、この小さな集団での育ちはプラスに働いているのではないかと思います。最近の保育園・幼稚園では、積極的に異年齢構成のクラスが作られたり、縦割り活動が取り入れられたりしていますが、異年齢の混合は子どもたちの自然な学びを促進するといわれます。この園では、縦割りのクラス設定などがなくても、小さな園のため、自然と異年齢の子どもたちのかかわりがたくさんあり、小さい子たちは大きい子を見て学び、大きい子は小さい子たちに教える機会があります。先生方もそういった環境をサポートしてくれていると思います。

 

・先生と友達とのかかわり

子どもの発達というと、母子間の絆、母親への愛着が偏重されがちですが、共同保育という特徴を考えると、ヒトの子どもは母親以外の対象にも積極的な関わりや愛着を形成するように進化してきていると考えられます。実際に子どもが保育士へ愛着を形成することは研究でも確かめられていますが、この園では、担任の先生への愛着形成だけでなく、その他の先生も子どもたちみなを良く見てくれているため、子どもがたくさんの大人に信頼関係を築いていると感じられます。

もう一つ、この園で得られる貴重なものとして、仲間とのかかわりもあります。先ほども触れましたように、1クラスは8-9人です。クラス替えはありませんので、0歳から5-6年間、同じ仲間と密に過ごせる環境があります。安定した仲間とのかかわりや絆が、社会性の発達に重要だという指摘もありますので、この環境は子どもにとってもよいのではないでしょうか。その実証例になると思われるのがうちの長男です。長男は人見知りで、小学校で友達ができるのか心配でしたが、先生の「友達を信頼する力は育っているから大丈夫」という言葉通り、小学校でもすぐに友達を作ってくれました。

 

以上のように、この園で子どもが成長することができた/できているのは、私にとっても、子どもにとっても本当によいこと、ありがたいことだと思っています。日々園の環境に感謝しています。

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